夜の街角、忙しく行き交うタクシーの中に、時折「回送」の表示を見かけることがあります。
この回送表示を目にした時、多くの人が「このタクシーには乗れるのだろうか?」と疑問を持つことでしょう。
この記事では、タクシーの回送表示が何を意味しているのか、そしてなぜ乗ることが難しいのかについて、その背景と理由を詳しく解説していきます。
タクシーを利用する際の小さな疑問が解消され、よりスムーズに移動するための一助となる情報をお届けします。
タクシーの回送の意味とは?
タクシーにおける「回送」表示は、車両が特定の理由で一時的に乗客を受け入れられない状態を示します。
この表示は、タクシー業界における運用上必要な状況で使用され、その意味を理解することはタクシー利用者にとっても有益です。以下では、その具体的なシチュエーションについて詳しく見ていきます。
帰庫するとき(営業所に戻る事)
営業を終えて営業所に戻る際にタクシーが「回送」表示をするのは、その日の業務が終了したことを示しています。
この時、ドライバーは新たな乗客を受け入れることなく直行で営業所に戻ります。この状態のタクシーは、通常、乗車拒否を意味するものではありませんが、営業終了の意思表示として「回送」を使用しているため、乗客を乗せることはありません。
ドライバーが食事や休憩しているとき
ドライバーが食事やトイレ、または短時間の休憩を取る際にも「回送」表示が用いられます。
この場合、ドライバーは休憩を終えた後、通常営業を再開するため、この「回送」表示は一時的なものです。
しかし、この間にタクシーに乗りたい乗客は、回送表示のタクシーを見かけても、その車両がすぐに利用可能になるとは限らないため注意が必要です。
給油するとき
タクシードライバーが給油する必要がある時、しばしば回送表示が用いられます。長時間にわたって運転を続けるタクシーにとって、燃料はまさに動力の源。
しかし、乗客を乗せた状態でガソリンスタンドに立ち寄ることは、サービス面で望ましくないと考えられています。
そのため、給油のためには一時的に営業を停止し、回送表示を出して燃料を補給します。
車に故障などのトラブルがおきたとき
タクシーが何らかの理由で故障やトラブルに見舞われた場合も、回送表示が用いられることがあります。
エンジントラブルやタイヤのパンク、ウインカーの故障など、安全な運行を妨げる様々なトラブルが発生する可能性があります。
こうした状況下では、タクシードライバーは乗客を乗せることができなくなり、すぐに整備工場へ向かう必要があります。
この時、回送表示を出すことで、他の乗客に対して現在乗車できない状態であることを伝えます。
タクシーの安全運行を確保するためには、こうした迅速な対応が求められるのです。
車両整備のとき
タクシー車両が安全に運行できる状態を維持するためには、定期的な整備が欠かせません。車両整備時には、「回送」表示を用いて、そのタクシーが現在乗客を受け付けられない状態であることを示します。
車両整備には、エンジンのチェック、ブレーキの確認、タイヤの交換など、乗客の安全を確保するための多くのプロセスが含まれます。
整備中のタクシーは、これらの作業が完了し、車両が再び安全に運行できる状態になるまで、営業を停止します。
この期間、タクシーは乗客を乗せることができず、ドライバーは回送表示を用いてこの状態を周囲に伝えます。
ドライバーの就業時間を超えたため
ドライバーの健康と安全を守るため、法律や企業の規定により、1日の就業時間には上限が設定されています。
ドライバーがこの上限を超えた場合、安全な運行が保証できなくなるため、「回送」表示を用いて直ちに営業を終了し、帰庫する必要があります。
長時間労働は、疲労による注意力の低下や反応速度の鈍化を引き起こし、事故のリスクを高めます。
このため、ドライバーの就業時間が規定を超えた場合には、安全を最優先に考え、「回送」表示によって乗客の新たな乗車を断ります。
この措置は、ドライバー自身だけでなく、乗客や他の道路利用者の安全を守るために極めて重要です。
タクシーの「回送」表示は、乗客にとっては一見不便に感じるかもしれませんが、安全運行を確保するための必要不可欠な措置です。
車両整備やドライバーの労働時間管理など、安全を守るための背景を理解することで、タクシー利用時の疑問や不便が解消されるでしょう。
安全な移動手段としてタクシーを利用するためには、これらの表示とその意味を知ることが重要です。
回送表示のタクシーに乗ることが難しい理由と乗れるケース
一般的に、回送表示があるタクシーに乗ることは難しいとされていますが、実は一定の状況下では乗車が可能なケースも存在します。
このセクションでは、なぜ回送表示のタクシーに乗ることが難しいのか、その理由と、例外的に乗車できる場合について解説していきます。
回送表示をしていいケースは限定されている
タクシーにおける回送表示の使用は、「旅客自動車運送事業運輸規則」によって厳格に定められています。この法律の50条6項と7項では、タクシーが回送表示を出すことができる具体的なケースを規定しており、ドライバーはこれらの条件に該当する場合にのみ回送表示を行うことが許可されています。
この規則は、タクシーが乗客を乗せずに特定の目的で移動する場合にのみ回送表示をすることを許可し、それ以外の理由で無闇に表示を出すことを禁止しています。
回送表示のタクシーに乗ることが難しい理由は、もし回送表示をしているタクシーが乗客を乗せた場合、それは「旅客自動車運送事業運輸規則」に違反する行為とみなされ、法的な責任を問われる可能性があるからです。
このように、回送表示はタクシー業界における運転の安全性や公正性を確保するための重要な規制の一つであり、ドライバーと乗客双方がこれを正しく理解し遵守することが求められています。
回送表示のタクシーに乗れるケース
タクシーが「回送」表示になっているにも関わらず、乗車が可能になる状況は主に二つあります。
回送表示の消し忘れ
タクシードライバーは休憩後、表示灯を「空車」に戻す必要がありますが、時には「回送」表示を消し忘れることがあります。
このような場合、タクシーは実際には営業可能な状態にも関わらず、間違って「回送」表示がなされているだけです。
法律上は、回送表示中の乗車受け入れは認められていないため、このような消し忘れは本来発生すべきではありません。しかし、実際にはドライバーの単純な操作ミスにより、乗客がこのようなタクシーに乗車できるケースが存在します。
ちょうど回送表示から営業中へ表示を切り替えるタイミング
もう一つのケースは、ドライバーがちょうど「回送」表示から「空車」または「営業中」へ表示を切り替える瞬間にタクシーを捕まえる場合です。
例えば、ドライバーが回送から営業への切り替えを行おうとしているときや、休憩を終えて営業を再開しようとするタイミングでタクシーを停止させた場合、乗車が可能となることがあります。
このタイミングは偶然に依存するため予測することは難しいですが、運良く出会えれば乗車するチャンスがあります。
これらのケースは例外的な状況であり、通常は回送表示のタクシーに乗車することは推奨されません。
しかし、これらの情報を知っていることで、タクシー利用時により柔軟な対応が可能となり、タクシー利用の選択肢が広がります。
乗車可能な場合の表示
タクシーに乗車する際、基本的に探すべきは「空車」または「割増」の表示です。
「空車」表示は、その名の通りタクシーが乗客を待っている状態を意味し、誰でも自由に乗車することができます。
一方、「割増」表示は、特定の時間帯や条件下で適用される割増料金が発生することを示していますが、この表示があるタクシーも乗車が可能です。
割増料金は通常、夜間や早朝、または特定の地域や条件下で適用されることが多く、料金が通常より高くなることを意味しています。乗客はこの表示を見て、割増料金が適用されることを理解した上で乗車する必要があります。
回送以外に乗車できない場合の表示
タクシーの表示板には、「回送」以外にも乗車できない状況を示す表示が存在します。
例えば、「賃送」は他の乗客がすでに利用している状態、「支払」は乗客が料金を支払っている最中、「貸切」は特定の顧客のために予約されている状態、「予約」は他の顧客の予約が入っているため乗車できない状態などがあります。
これらの表示がされているタクシーは、基本的に新たな乗客の乗車を受け付けていません。乗客はこれらの表示を理解し、適切なタクシーを選択することが求められます。
タクシーの表示を正しく理解することで、乗車を拒否されるなどの不快な経験を避けることができます。
特に、乗車可能な表示と乗車できない表示を見分ける能力は、効率的かつ快適なタクシー利用において非常に重要です。
まとめ
- 回送表示の意味: 「回送」表示は、タクシーが一時的に営業を停止している状態、または特定の目的で移動していることを示します。
- 法的規制: 「旅客自動車運送事業運輸規則」により、回送表示が許可される状況は限られています。ドライバーはこれらの規則に従う必要があります。
- 乗車可能な表示: 乗客がタクシーに乗車できるのは、「空車」または「割増」表示の時です。
- 乗車不可の表示: 「賃送」「支払」「貸切」「予約」などの表示があるタクシーは、基本的に新たな乗客の乗車を受け付けていません。
- 回送表示でも例外的に乗車可能なケース: 回送表示の消し忘れや、回送表示から営業中への切り替えタイミングで、乗車が可能になることがありますが、これは例外的です。
タクシーの表示を正しく理解することで、効率的かつ快適にタクシーを利用するための知識が深まります。表示の意味を知ることで、不要なトラブルを避け、よりスムーズな移動を実現できます。